先日Canonから発表されたシネマEOSシリーズの新作です。
日本でのマーケティングはほぼ行っていないという、少々不思議な状況ですが
海外では積極的にPRしているようにです。
軒並み取り上げているのは海外のYoutuberやビデオグラファーといった人達。
その中で上がって来ているのは、SONYのFX6との比較や対比です。
個人的には、その意見には疑問を感じます。
何故今回多くの人がFX6と比較したがるのか。
その辺りも含め、C400の魅力についても考えていきたいと思います。
スペック
発売が予告された現在スペックは既に日本のページにも紹介されているので、
わざわざ紹介する必要はないでしょう。
とはいえ、最低限は紹介したいと思います。
新しい35mm、6K裏面照射積層型CMOSセンサーで、
これはR1のセンサーと同じものを使用しているのではないかと噂されているセンサーです。
公式ページにも記載されていますが、裏面、積層型化することで光りを多く取り入れることができ
よりAF範囲が拡大し、読み出し速度も向上しているとのことです。
そしてAFシステムがデュアルピクセルCMOSAFⅡが搭載され、AFエリアが100%となり、
人物の検出被写体が瞳、顔、頭部、胴体と向上しています。
特だしとしてトリプルベースISOがあり、ベースISO12800が追加され
低照度での撮影でも力を発揮するとのことです。
その他にもC500mk2やC70と比べて様々なアップデートがされていますが、
かなりキャノンとしては思い切ったアップデートのようにも感じました。
アクセサリーの自由化
C400では、モニターやグリップにUSB-Cポートが使用されています。
一般的にカメラ間のケーブルは独自のコネクタピンなどが使われ、
社外品が使用されるのを機能的に防ぐ形になっていました。
しかし、今回モニターやグリップに繋ぐコネクタがUSB-Cが採用され、
サードパーティー製のモニターやグリップなどの拡張性を感じます。
USB-Cにより社外品のモニターに切り換えて使用することもできれば、
制作内容に合わせたチョイスが可能ということです。
さらにモニターをデイジーチェーンのような形で接続して使用できるのであれば、
外部出力を使用せず、カメラモニターを増やすことがき、
カメラ周りのセットアップの効率も上がるように感じます。
グリップについてもSONYのFXシリーズのように、
ハンドル部分を延伸させショルダースタイルにもやすくなったり、
サードパーティ製のハンドル角度が調整できるモデルの登場や、
アサインボタンが多いモデルなども期待できるのではないでしょうか。
この辺りの期待を感じさせるもう一つの要因は、
ケージやリグパーツの発表が早いことです。
SONY製品は人気があるからか、新製品の登場に合わせて、
ケージやリグの発表がされている印象があります。
キャノンは発表から数ヶ月後にチョロチョロと発表される印象があり、
あまり力が入っていない印象を感じていました。
しかし、今回、これらのパーツ開発も積極的に行われているようで、
デモパーツがすでに海外の展示会で登場しています。
この辺りの動向から察するに、今回のC400には注目が集まっているのは確実ですし、
早い段階でパーツの発表を行うということは、
それだけC400出荷が期待でき、
発売開始と同時にユーザーの囲い込みを行いたいというリグ系メーカーの戦略が伺えます。
個人的にはモニターサイズが小さくなっていることが気になりました。
というのもC500mk2よりも小さくなっているのです。
CineD/キヤノンがEOS C400シネマカメラを発表 – 6K、フルフレーム、RAW内部記録、トリプルベースISOなど
C500mk2が4.3インチ、C400が3.5インチ
モニターサイズがSONYのFXシリーズより大きいことは、
海外でも好意的だったはずなのにどうして小さくなったのか。
このサイズ、確認してみるとBURANOやFX9、FX6と同サイズなんですよね。
ということは、Zacuto製のZファインダーも使えるということです。
ZacutoもC400用のZファインダーを発表していました。
このことから考えても、敢えてモニターサイズなどを競合と同じサイズにすることで、
パーツメーカーに積極的に開発を促している節を感じます。
これはガンダムユニコーンでいう、連邦とジオンの機体でも武器を換装して
使用できるユニバーサル仕様な感覚に近いところがあるのではと感じました。
今回のC400では、
アクセサリーの自由化による市場の活性化と、
キャノン派閥を醸成するような戦略が見え隠れしています。
トリプルベースISO
FX6と比較される要因の一つが、
新しく追加された低照度向けのベースISO感度12800です。
キャノンのシネマラインの大きな特徴として、
DGOセンサーという画期的な仕組みがありました。
リアルタイムHDR撮影のような仕組みで、
ハイライトとアンダーを撮影後に重ねるようなREDの仕組みとは違い、
映像を抽出する段階でハイロー二つのアンプで抽出するのが特徴で、
モーションによる影響を受けません。
これにより、高いダイナミックレンジが実現し、
高画質の指標の一つハイダイナミックレンジを追究するキャノンというイメージがあります。
さらにDGOセンサーは、RFマウントに対応したC70にも搭載されていたため、
新しいシネマEOSには進化したDGOセンサーが搭載されたものになるのだろうという予想が大方でした。
しかしC400では、DGOセンサーは搭載されず、
ベース感度切り換え型になったのです。
上記の文脈から大きく変わったこと、
ハイダイナミックレンジから、
低照度にシフトしたという番狂わせが起こりました。
この切り替わりが低照度に強いシネマカメラのFX6という比較対象になっているのではないでしょうか。
では低照度性能はどちらが優秀なのか?
その疑問については、すでに検証されています。
製品版ではないので確実ではないようですが、
FX6よりも画質が良いという結果が大半です。
レビューをしている動画がここに上がっています。
シャドウ部分のノイズが少なく綺麗です。
考えてみれば当然ですが、
まずもってセンサーの有効画素数が違います。
FX6が有効画素1080万で、C400が有効画素1960万です。
ピクセル数の違いがノイズを低減させているのは確実でしょう。
低照度で撮影が出来るのは、MV系などでかなり力を発揮するのではないでしょうか。
またCanonドキュメンタリー撮影でも低照度撮影の力は非常に役立つと感じています。
ワンオペでできることは多くありません。
低照度性能を活かして、照明をコンパクトにできる可能性も高く、
照明を必要としながらも機動力も確保出来るような撮影も可能になるかもしれません。
ベースISO12800でRAW撮影が出来るのも圧倒的です。
FX6も外部RAW出力ができるとありますが、現在収録可能ななのはProres RAWのみです。
ファイナルカットプロでしか編集できず、RAWを調理するためには最適とは言いがたく、
Canon Cinema RAW-lightをそのままダビンチリゾルブで利用できる点を考えると、
12800をよりダイレクトに調整できる点でかなり魅力的と考えます。
この部分の差で考えても、ボトルネック部分が解消されておりC400が圧倒的と言わざるを得ません。
AF性能
R5Cでも搭載されなかったAFⅡがようやく搭載され、FXシリーズに追いついたという感じです。
どんなに動いても人物からAFが外れることは無さそうです。
またマスクを付けている時でもAFが反応してくれることを祈りたいですね。
キャノンのRシリーズのAFは非常に優秀ですが、Cinemaラインは、AF性能が最新ではないという感じでした。
動画のAFについては、タッチAF機能が強く、この辺りに粘るAFと組み合わされば非常に強力で使いやすいのではと感じています。
キャノンには追尾AFがありました。
キャノンのモニターのタッチAF性能の良さと追尾性は、特定のものにAFを合わせるのに便利で非常に重宝します。
現在記載はありませんが、通常通り搭載されていることを祈ります。
AFⅡが搭載されましたがR6mk2ほどの判定の種類がありません。
車や鉄道、飛行機、動物も鳥や馬といったタイプの動物には対応してほしいと思いましたが、
近年のアップデートやり方からすると
わざと後半のアップデートに取っている可能性があり、アップデートでの対応を期待したいです。
これらが搭載されれば間違いなくAF性能でもSONYより頭一つ飛び抜けることになると思います。
また気になるのが低照度でのAF性能です。ベースISO感度12800が登場したことで、
低照度でもAFが粘るのかは気になります。
この辺りのレビューは少なく、実際の状況が気になるところではありますが
こちらの性能が良ければ、万能カメラとしての地位を確立できるのではと感じています。
下記は参考の動画。
IBIS
手ブレ補正機能は、BURANOに搭載され、FXシリーズの6、9には搭載されていません。
C400にもIBISは搭載されていない状況です。
とはいえBURANOに搭載されているIBISの性能は、
それほど強いものではないように感じました。
僅かにフォローするようなレベルで、
階段を昇るような動きなどに対応はしていないように感じます。
それよりもジャイロセンサーを利用した、
ジャイロデータスタビライズの方が効果的にブレを抑えているように感じます。
BURANOのIBISは客寄せパンダ的な機能なのかもしません。
その点で考えれば、
C400にIBISが搭載されていなくても納得は行きますが、
メタデータを駆使した、
後処理でのスタビライズシステムが必要な点としては惜しいように感じます。
C400はFX6のライバルなのか
予想するに違います。キャノンとしては、
FX9、FX6双方の良いところを全て詰め込んで
FX9以上BURANO以下の機種として発表したのだと思います。
その点をいくつか紹介したいと思います。
イメージセンサー
現在ではFX9の良いところがあまり見られず、FX6に持って行かれがちですが、
イメージセンサーは、FX9の方が高解像度かつ高いピクセル数を誇っています。
FX9が現在それほど画質で評価されていないのは、
ポジションがFS7寄りの設計だったからかもしれません。
まだ発展期だったからなのか、logや色味で少々現代的とは言えません。
とはいえ当たり前のことですが、ピクセル数の多さが高解像度に大きな影響を及ぼす点です。
オーバーサンプリングによるノイズの低減と、細部のディティールの解像度は
ピクセル数に依存してしまいます。
小さい画面であれば気にならないのかもしれませんが、
大きい画面で見たときや、クロップをした編集をすると解像感が落ちてしまう。
最近は、スタビ処理や縦横使い分けたりと、
クロップをして拡大表示させることが増えてきています。
FX9では、その他の弱点からか解像感にフォーカスがいっていませんが、
C400の有効画素数を活かしたオーバーサンプリング機能で
密度の画が活きているように感じています。
音声出力
本体にXLR端子が付いている点もFX6より良い点だと感じます。
Miniサイズですが、ファンタム電源に対応していますし問題は感じません。
FX9には2ch分があり、使い勝手としてはFX9に近い使い方が出来ます。
一方FX6はハンドルがないと、XLR端子がなくなってしまうため、
それはそれで使い勝手が悪いところがあると思いました。
1ch分くらいはXLRを確保してほしいというのが、
ユーザーの本音だったのではと思います。
とはいえ、FXシリーズのハンドルの作りは素晴らしいと思います。
音声以外にもRecボタンなどが配置され、ハンドルでも操作が可能な点は素晴らしい。
様々なオペレーションが考慮されている素晴らしさがあるので、
この部分はて取り入れてほしいですし、
TASCAMなどがC400用にそういったハンドルを開発してほしいと思いました。
その他出力系
XLR以外の出力系を見てもFX9以上のアウトプットが用意されています。
SDI出力やTC出力などはFX9と同等です。
さらにC400では、USBのアウトがあるので時代に合った拡張性を感じますね。
この点から見ても、FX9の仕様感に寄せていてFX6で不足しているプロフェッショナルな現場での活用にも、
柔軟に対応できるパフォーマンスを持っているのが分かります。
上記の点などから考えても単純スペックだけで見ると、
FX9と比較するのがc400は妥当とも言えます。
何故C400はFX6と比較されてしまうのか
いくつかの要因があると感じました。
そこについて振れたいと思います。
低照度のベースISO感度
ボックスタイプやシネマカメラスタイルのカメラで、
ベースISO12800持っているのはFX6であり、
強力でキャッチーなワードに引っ張られている可能性が高いです。
それだけ求められている点でもあります。
現在制作予算は削られていく一方です。
3年前はNetflixやディズニーがそこを変えると思っていましたが、
今後はNetflixも他のプロダクションやテレビ同様、予算の制限は強まっていくと感じています。
もちろん、日本の予算よりは潤沢で自由度が高いことに変わりはないと思いますが、
連続視聴時間の維持や離脱率を防止するような指針が強まっているとどうなんでしょうか。
数話単位のドラマ型になっていくのは避けられないと感じています。
そう考えると全体予算の圧縮が求められてくるのは、
遠くない未来なのだと予想しています。
こういった中でC400は複数台導入のプロジェクトや
ミドル、低予算のプロジェクトで
積極的に利用されキャノンの名前を浸透させたいという
狙いがあるのだと感じています。
参考の動画。
ジンバルにも載る筐体
FX9はジンバルに載せることは難しい点や
FX6がギリギリジンバルにも載る点を考えると、ジンバル搭載が可能な点が比較対象となったのでしょう。
FX6辺りから、ジンバルの性能も上がったことで、
ボックスタイプのカメラもジンバルに載せられるようになりました。
その筆頭格としてFX6というのが強いのだと思います。
もちろんKOMODOなどもありますが、
多用途性能から考える比較対象がFX6になるのは頷けます。
多用途性から考えるとC400はFX6と似ているポジションなのは間違いありません。
ジンバルに載るというのは、メリットです。
特に時間がない、予算がないという現場ではジンバルは必要不可欠なアイテムでしょう。
重さはFX6よりもありますが、ボックスタイプであり重心位置が中央で収まりやすいメリットがあります。
ジンバルは繊細で重さ以外にも重心位置が動かないことがセッティングの速さ、精度に関わってきますので
レンズと組み合わせた時に中央から後ろ寄りに重心が位置づけられるのであれば、C400の方がジンバルのペイロードギリギリであっても
安定性が高い可能性があります。
販売価格
FX6と同価格帯というのが大きな要因。
C400は日本円では円安の影響で130万円を超えていますが、8800ドルなので海外感覚では90万円くらいの価格感でしょう。
これはKOMODOの販売価格と近く、FX6が約6000ドルでC400よりも2800ドル高い設定です。
とはいえ、2020年から物価上昇率が約20上昇していますから、差額は1000ドル程度。
価値観的にはFX6よりも10万円高いくらいの感覚なのではないでしょうか。
だらか、ついつい同価格帯のFX6と比較してしまう。
よく見てみると性能面ではFX9以上の性能かつ、
最新技術にFX6の長所面も取り入れたマルチなカメラです。
キャノン的にはFX9越えの位置付けを安く提供し、
5Dの革命をプロフェッショナルユースの業界でも起こしたいというのが本来の狙いのように感じました。
海外レビューアーの言う投入が遅すぎた問題
多くのレビュアーがエキサイティングだが、タイミングはやや遅かったという意見が散見されます。
多くのユーザーがEマウントのレンズとボディーで構築され入り混む余地がないのではないか。
乗り換えるユーザーがそれほど期待出来ないといった意見です。
当然、乗り換えに足踏みする気持ちは分かりますしリリースのタイミングとして
競合となりえるか、FX6mk2が出たらおしまいだろというところは、ないとは言えません。
とはいえ、FX9が既にあり、FX6mk2どこまでカニバった性能を出せるのかというマーケティング的な懸念点があります。
FX9を黒歴史として葬り去り、FX6mk2を出すというのなら、競合になることは間違いないでしょう。
そうだったとしても価格帯をどうするのか、C400のような強気な価格帯を出せるのかが分かれ目になりそうです。
日本でPRをしない理由
今回、日本ではまったくと言って良い程PRを行っていないのが気になります。
市場としての魅力がないというのが大方の意見なのだと思いますが、
カメラの利用率から考えても勝てないフィールドだと踏んでいるのでしょう。
円安の影響も強く、購買意欲が高いとは言えない。
ならば円安を利用してバブル期の車産業同様、高性能、低価格な輸出品。
そんな位置付けで一揆に市場を広げたいと考えているのではないでしょうか。
日本のマーケティングとしては、海外人気とアクセサリーが充実した段階で
逆輸入的なPRで、有名レビュアーや作品作りに影響されて購入を促すといった戦略なのではないかと感じています。
また海外市場が活性化できれば、日本市場向けに100万を切る価格で打ち出すような段階的なPRを立てているなんて
考えていれば、のけ者にされた感は薄くなるのかなと思います。
怯えているのかSONY
気になるのは、SONYの動きです。
最近、FX6のレビュー動画が増えているように感じます。
そしてC400の発表すぐ後に、SONYのファームウェアアップデートを発表するなど、
最新記事で情報を覆い隠すようなドミナント戦略っぽさを感じます。
発売されてかなり経っているのですが、
公式チャンネルでもインフルエンサーを器用して紹介している様子からするに、
恐れを感じているとも読み取れます。
BURANOで成功を収めているとは思いますが、
販売価格からすると出荷台数が、そもそもそれほど稼げないのは織り込み済。
機材レンタル、プロダクション、一部の個人辺りが限界でそれを見越した価格とはいえ、
市場や利益に貢献する分野ではないのでしょう。
フィアットグループのマセラティといった位置付けなのかもしれません。
だからこそ、FX6のようなモデルの位置付けが、
市場や利益の面では重要なファクターになってくる。
その点を考えると、FX6が市場から引き離されれるのを恐れている、
だから今になって様々なユーザーに製品を貸し出し有用性をPRし
FX6の盤石な基盤のイメージを見せたいのではと感じ取りました。
この点から考えると、C400は非常に有用で、ゲームチェンジャーとはいかないまでも
C400をA-CAMとした、キャノン機種統一の制作体制という派閥が生まれることは間違いないでしょう。