あまりメジャーな製品ではないかもしれません。
でもこの雲台、使えます。
今回は、Flexshooter Proのレビュー。
※この記事にはプロモーションが含まれています。
Flexshooterとは、野鳥やスポーツ撮影のような左右、上下のパン。
移動の激しい被写体をスムーズに追い掛け逃さないための雲台として開発されました。
そのため一般的なスチール用の固定式の雲台とは違い、動くことが前提になっています。
また動きも滑らかによどみなく動く必要があります。
野鳥撮影では、非常に遠くに被写体を追従する必要があることを考えると、
ちょっとしたブレやひっかかりで、被写体を外してしまう可能性が高く、
厳しい要求に応えるように作られたものだと推察できます。
この雲台が有名にならないのは多分、その法外とも言える価格。
スチール用としては非常に高額で、用途も限定的。
一般的には性能を生かし切れず、宝の持ち腐れになりやすいのが原因なのではないでしょうか。
そんなFlexshooterですが、化け物染みたスペックを見てあることを思いました。
これはムービー用でも使えるのではないか?と。
スムーズなパンニングに45kgを超える耐荷重。
上手く活用できればビデオ雲台より良いんじゃ無いか。
そんな人柱感覚で今回使用してみましたが、これは使えます。
今回、ムービー用途視点でのレビューになってしまいますが、
ムービーの方はこんな雲台があるんだと知っていただき、
雲台選びの参考になればと思いますし、
スチールの方も機能面で判断いただき購入検討の参考にいただければと思います。

FlexshooterProの仕様
使用は下記の通ります。
- 材質: アルマイト処理された航空機グレードのアルミニウム合金
- 重量: 約721g (または680gという情報も見られます)
- 耐荷重: 45kg
- 内側ボール直径: 45mm
- 外側ボール直径: 66mm
- ベース部直径: 63mm
- 三脚取付ネジ穴: 3/8インチ
- クランプ: アルカスイススタイル
これだけでは一体何がいいのか、よく分かりませんよね。具体的な特徴について紹介します
Flexshooterの特徴
まずなんと言っても特殊な雲台の機構があります。ダブルボール式の自由雲台構造。
誰がこんな機構思いつくんだという感じですが、地球の地殻のように外側と内側の2層で構成されています。
外側のボールは、主に水平を導き出すためのものに使用され、パンニングのための土台になります。
内側のボールは、動きを担うものになっており、このボールが左右上下のパンニングを担います。
内側のボールの内部にバネのような機構があり、一般的なボール雲台とは挙動が少し違います。
上下の加重に対する制御が加わる感覚がありました。
一般的なボール雲台のような自由に動き回る球体を制御するというより、
戦艦の砲塔や高角砲を動かすような感覚です。上下と左右の動きに内部で切り分けられていて、
一定のトルクが掛かると、上下または左右が動くようになる感覚です。
上下左右の動きを組み合わせることで、
滑らかに被写体を追従できる感覚がします。
触ってみないと分からない感覚ですが、
内部でそのような感じの制御が掛かるようになっているのだと思います。
カメラの重さに応じて、
トルク量をコントロールすることでパンニングスピードをコントロールする仕組みでした。
メモリはありません。
ですから、自身のセッティングで最良のトルクを見つけ出す必要がありますし、
カメラをロックする場合は、そのトルクノブを締める必要があるため、
トルク感は手の感覚に頼らなければならないので注意が必要です。
動きは非常にスムーズです。
安いビデオ雲台よりも横パンはやりやすく、Flexshooter Proの耐荷重が45kg。
シネマカメラで中望遠レンズを付けても問題無くティルトアップ、ダウンが可能です。








実際の操作感
Canon C400にRF24-105mmZとRF200-800mmを付けてのレビューになります。
スチール機との違いは、カメラとレンズの重心位置の違いなります。
C400はボディ重量が約1.5kgあり、概ね一眼の倍くらいの重さです。
また望遠レンズを装着しても三脚座を使用することはできません。
そのため雲台の取り付け位置はボディー側に限定されます。
24-105mmは一般的には70-200mmのサイズ感、重量なので中望遠レンズを想定してもらえればと思います。
20-105mmの場合は、ボディー側に重心があり雲台との一体感は強め。
レンズに振り回される感覚はありませんでした。
操作感が普通の雲台とは違うので慣れるまで感覚を養う必要があります。
外側のボールはビデオ雲台のハーフボールの役割と同じです。
三脚をセットしたのち微調整を外側のボールで行います。
黒いノブが外側のボールのロックを担っており、ボールが水平位置を保つように調整することで、
後のパンとティルトの操作の精度が決まります。
一般的なビデオ雲台よりも横パンの水平精度がシビアに感じました。
雲台自体が小さいからなのかもしれません。
ですので、外側ボールの気泡はしっかりと入れて水平を確保した方がいいです。
水平が確保出来たら、外側のボールをロックし内側のロックを解除します。銀のノブです。トルクの調整はこの内側ボールのロックにもなっています。
トルクの感覚は、練習しないと掴めない感じです。
簡単ではありません。
強度のかかり具合はちょっと分かりづらい印象を感じました。
ボールを動かすトルクと内部のバネが働くトルクが僅かにズレているのでパンニングをする際は、パンニング速度にあったトルクにする必要があり、それも12分1回転程度でも変化するレベルなので、ルパンが金庫の番号を探るように近いところまで来たら微調整するような感覚が求められます。
パンパンと一発決めのような動きは結構難しいので、時間がない時は少し慌てるかもしれません。200-800mmのような大型レンズを付けている場合は重心位置がシビアに影響します。
重心位置で制御できる角度が変わってくるので、ザハトラのような感覚でいると後悔します。許容を超えると途端にガクッと効かなくなるので、この点はデメリットでした。
本来の使い方ではないので参考程度宇に留めてください。
45kgの耐荷重があっても左右に長いと許容を超えてしまう印象があり、とくにティルトアップ、ダウンはC400では40度くらいから制御が効かなくなる印象です。
重心位置を雲台に中心に寄せることが出来れば50度くらいは許容できたような感覚がしました。
パン、ティルト共に、動き出しに少し癖があります。
ボールのロックとバネの制御開始に僅かに違いがあるため一瞬引っかかるような感覚がします。
そこからトルクに合わせて動き出す感じがしますので動き出しは扱いに注意が必要です。
パン
横パンはスムーズに動きます。
しっかりとしたビデオ雲台に近い動きをしてくれます。
注意しなければならないのは上下も同じように
解放されているので気を抜くと上下に動いてしまいます。
ロックは一つしかないので、ここは小ささとトレードオフといった感じです。
力加減を調整すれば大丈夫ですが、練習が必要だなと感じました。
ティルト
パンより難易度は高め。
バネの掛かり顕著に出るため、制御が少し難しい印象があります。
カメラの重心位置が中央からずれている場合、
どちからかに流される傾向にあるので止める時に少し黒します。
一定のトルクが掛かるというよりバネがある程度加重を制御しているような挙動をするため、
角度の違いでトルクの掛かりが少し変わるような感覚でした。
そのため、ティルトの方が苦手のパターンの雲台になります。
一般的なビデオ雲台と比べてどうか?
ザハトラのようなしっかりとしたビデオ雲台と比べてしまうと勝てません。
それを代替するようなものではないと考えてください。
カウンターバランスを調整できるわけではありませんし、
ビデオ用に設計されているわけでもありません。
金額が高いので期待値が高くなりがちですが、これはこれ。それはそれ。
といった感じで棲み分けて考えていただくのが良いと思います。
とはいえ、ザハトラのような三脚はどうしてもゴツくて大きいです。
撮影準備に時間があってカットごとにバッファーがあればいいですが、
そうではないところでパンやティルトをしたい。
そんな時に使える雲台だと感じました。

使用例
ハイキングや登山系のコンテンツ作成時に。
山や森といった場所に少人数またはワンオペで入る必要がある場合。
荷物が限られてくる現場でザハトラのような大きな三脚を持っていくには専属でアシスタントが必要になってしまうでしょう。
またセッティングにも時間が掛かりますし、疲れてくれば妥協して段々と手持ちになっていってしまうもの。
荷物の置いてある拠点から距離がある場合や、
高低差の激しいところではFlexshooterの方が良いでしょう。
小型でザハトラのような三脚と比べれば軽量です。
コンパクトにできるので持ち運びが容易になります。
山道の中腹から見える景色の途中、途中で横パンできたら気持ち良くないですか?
疲れて妥協して、手持ちのフィックスにしてしまったり、手持ちで振るだけで終わるくらいなら、
Flexshooterで横パン決めた方がいいですし、中腹の景観のバリエーションがあった方が華が増えて楽しくなるはずです。
お祭りのようなイベント撮影に
時間的余裕がなく、尚且つ移動距離の多いお祭りのような撮影ではFlexshooterの方が向いています。
三脚で狙おうとするとどうしても、準備時間の余裕を作る必要があり、妥協をする場面が生まれがち。
数名で撮影できているのならいいですが、
ワンオペのようなスタイルでは、決めの引き画の数がどうしても少なくなってしまいます。
Flexshooterなら、軽量な三脚と合わせてビデオ三脚にすることができ、
リュックに縛って持ち運びができます。
そうすれば取れる画の数が増やせて妥協を最小限にできるのではないかと感じます。
レンタルスペースのイベントに
レンタルスペースのような小さい場所でイベントをする際にも使えます。
このような場所では三脚を設置する場所がなく、三脚自体が映り込みの対象になり邪魔になりがちです。
最近はシンプルですっきりとしたスペースが増えてきて、
面積を確保するためにバックスペースがないところも多くなっています。
扉の外などNGな場所もあったりするので荷物置き場も確保できないような場所では、
小さくコンパクトなセッティングが求められます。
こういった場所ならいっそのこと三脚は諦めて
一脚にFlexshooterを取り付けてしまうほうが効率的です。
一脚でも高さを出さなければ、合う程度安定するものもあるので横パンを決めることも出来ます。
総合評価
もちろん、時間に余裕があるならザハトラのような三脚でバシッとやる方が気持ちいいですが。
その選択が全てにおいて正義ではない時があります。そんな時のためのFlexshooter。
これがムービーにおけるFlexshooterProのポジションなのではないかなと思いました。
とはいえ、どちらも所有するのは正直キツいのは確かなので、
まずは自分の現在の状況やスタイルに応じてどっちの使用率が多いのかを考え、
使用率が高そうな方から購入を進めていくのがいいのではないでしょうか。
