日本ではまだ正式に販売されていませんが、エーデルクローン第二世代スライダーWing PROを入手しましたのでその製品のレビューをしたいと思います。
Wing PROとは
エーデルクローン社の第2世代スライダーです。
エーデルクローンにはウイング 3、7、15という3タイプのモデルがありましたが、第2世代モデルは2モデルとなっています。
今回は二つのモデルの中で上位版にあたる耐荷重21.7KgのWingPROのレビューです。
スペック
収納時サイズ
176㎜×60㎜×89㎜
重量
2kg
耐荷重
21.7kg
マウント部
底面:3/8インチネジ穴(大ネジ)
上面:1/4インチネジ(小ネジ)
スライド距離
40cm
材質
ステンレス製コンポーネント、コンピュータ制御削り出しアルミ
ファーストインプレッション
エーデルクローンの製品はシンプルなデザインが良い。
写真では小さく見えてしますが、実際はかなり大きく感じました。
大人の手が子供の手に見えてしまうほどです。
しかし、他のスライダーと比べると非常にコンパクトで軽量だと感じました。
デザインに関しても、不要な突起がなくカメラバックなどに引っ掛からず収納可能なのがいいですね。
山岳地や渓谷等など徒歩でしか運搬できない場所での使用を考えれば魅力的な機材だと感じました。
不安点は、ロック機構もアルミの切り出しです。
温度がマイナス下でロックパーツが凍結します。
ロックを固着し外せなくなる瞬間がありました。
Wing PROを選んだ理由
21.7kgの耐荷重がもたらすデジシネ、業務用ENGカメラの高画質ショット。
効率良く少人数オペレーションでのデジシネ、業務用ENGカメラでの活躍の幅を広げるためというのが狙いです。
リクルート動画など、コンパクトに動ける運用にも必要になるでしょう。
なによりもURSA mini4.6kを少人数のオペレーションで最大限活かす方法を模索していました。
一時はウイング15にしようかと思いました。
しかし、レンズを含めると耐荷重ギリギリの計算になりエーデルクローン特有の移動モーションにも悪影響が出るので躊躇していたのです。
自然なモーション
耐荷重に余裕があるためのトルク調整部分にも余裕がありました。
トルクの制御は、接続部下のベゼルの操作です。
リグ組みのURSA mini4.6kでもトルクを締め上げるとスライダーが動かないほど強力に効いてくれます。
エーデルクローン公式サイトでもURSA miniを運用している動画が紹介されていました。
そこでの構成は、レンズとバッテリー+α程度だったので実際の使用に不安な面もありましたが全く問題ありませんでした。
重心移動によるたわみのブレ
スライドレール部分のたわみ現象は、カメラの重量が重くなると起こりやすい現象です。
たわみはカメラのスライダースピードや画角に影響し、使えないショットになってしまいます。
たわみは発生する。
使用当初は確認出来ませんでしたが、細かい検証を追加した結果たわみが起こりました。
重量4.5kgまでは問題なく使用できます。
5kgを超えると重さによってたわみが発生することが確認出来ました。
7.5kgの場合は水平間を維持出来るのは全体の1/3〜1/2の間です。
たわみを防ぐために買った物をあれこれカスタムしなければならないというのはよくある話。
すると、可搬性は携行重量にも影響でてしまい少人数でのオペレーションの場合負担が増大してしまいます。
Wing PROではそのようなたわみの発生などは感じられませんでした。
この点は合成の強さと、劣悪な環境での使用にも十分に耐えてくれそうな予感。
セットアップの時間短縮に期待大
Wing PROは三脚1本だけでセットアップが可能。
重量のある業務用カメラでのスライダーショットは、準備に時間がかかります。
理由はカメラの重量に対してスライダーと三脚が重心移動に耐えられないからです。
そのため、スライダー1セットに対し、三脚を2本など機材準備に時間が数倍に膨らみます。
Wing PROならば、既存の三脚1本に対しセットアップが簡単に行え、ワンオペレーションにも十分に使える仕様だと感じました。
Wing PROはSteadyMOVEが使えない
このスライダーの問題点は、新機能のステディームーブ機能です。
SteadyMOVEの機能とは
傾斜を使ったスライダーショットも滑らな動きで安定した画を作り出せる機能。
傾斜を上下させるようなスライダーショット時に同じトルクでスライド出来る機能です。
斜め使用の場合、ベアリングロック型のスライダーだと、重力の影響を受けトルクが効かずおなじ速さでの滑らかな映像になりません。
SteadyMOVEはwingの強力なトルクを活かして、斜めの状態でも同じトルクでスライドさせることが出来る機能です。
プロモーション映像でも紹介されていますが、エーデルクローンのWingPROのSteadyMOVE機能は紹介されていません。
実際試してみようとしたのですが、Wing PROではなく三脚と雲台がURSA mini4.6kの重量を支えきれなかったです。
雲台の耐荷重とカウンターバランス能力がボトルネック
通常の水平スライダーも試したのですが、こちらも重心の移動により雲台のカウンターバランス能力が両端に届く前にキャパシティーを越えてしまいバランスを崩してしまいました。
6kg以上のカメラを使用する場合は、実際のスライダー距離は25cm前後になっていました。
これはWing PROに原因があるわけではないので、ボトルネック部分を改善すれば十分に使える手応えを感じています。
旧ウイング15と比較して買いか
ハイウエイトのカメラでスライダーショットを使いたいという場合は買いです。
既にウイング15を持っている方は不要かもしれません。
今回の構成はURSA mini4.6kとリグ+バッテリー+マンフロット502AHの合計7.65kgでした。
Wing PROはURSA miniなどの低コストデジシネ層の運用を狙った意欲作
正直な感想としては購入して正解です。
エーデルクローンの動画マーケティング戦略も10kg前後のデジシネでのPV制作等での運用を狙った製品なのではないでしょうか。
今後この領域の利用者は拡大するでしょう。
プロダクションのオペレーション人数は一部を除き、より少人数化が進むはずです。
高画質の映像活用も現在よりも一段と簡単になると感じています。
運用される機材は必ず、低コストデジシネになるでしょう。
次世代のスタンダードを取り入れるという意味ではとても価値のあるスライダーなのではないでしょうか。