コーヒーCMから研究した売れる映像の作り方

テレビを見ていれば一度は見たことがあるのではないでしょうか。
大人になると手放せなくなるコーヒー。
今では、セブンイレブンなどでも深入りのコーヒーを味わえますが、日本のコーヒーの時代を作ってきたのは缶コーヒーCMだと確信しています。

今回いくつかのメーカーの映像を研究し、そこからどのような動画がCMのような広告として使えるのかについて研究してみました。

コーヒーは誰のためにあるのか

コーヒーの消費イメージは男性です。
もしかしたらそれすら偏見かも知れません。
そこで実際のところを調べてみました。
それでは、実際コーヒーの消費率を見てみましょう。

図1

出典「全日本コーヒー協会 年齢別飲料状況3年識別 一人1週間辺りの杯数」

このようにしてみると、消費に関しては男女の差は少なく男性的なイメージであっても男女関係なく消費されていることが分かります。

コーヒーと言っても様々な楽しみ方が出来る現代です。
もう少し具体的な要素に分解する必要がありそうですね。
缶コーヒーCMの場合、その利用者層、そして利用場所が重要なファクターとなるでしょう。

何故なら、利用シーンによって缶コーヒーの出番ではなくなってしまうからです。
簡単な例で言えば、自宅で休日に缶コーヒーを飲むというのは、缶コーヒーの味が好きでなければ中々いないでしょう。

簡単にドリップマシーンを購入出来るようになった昨今では、缶コーヒーは自宅ではアウェイと言える存在です。
一番消費が予想されるのは、職場や出先の移動途中の自販機などではないでしょうか。

日常的に手に取ったり目に触れる機会の多い缶コーヒー。
さまざまなタイプの商品がある中で、どんな商品を、誰が、どのように好んで飲んでいるのでしょうか。
調査結果によるとコーヒーの利用率は缶コーヒーの場合は8割弱を占め圧倒的です。
そしてその利用場所についての調査結果についても記載されています。

図2

出典 株式会社クロス・マーケティング「缶コーヒーのブランドや購入・飲用シーンに関する調査」

缶コーヒーの利用場所は職場や現場が多いことが分かりました。
予想通りの展開ですが、コーヒーCMを思い浮かべて下さい。

缶コーヒーCMの中に休日をイメージさせるような映像が浮かんで来たでしょうか。
私が知っている中では、常に男性が働いている姿の印象しかありません。

これは幾つかの缶コーヒーメーカーのCMでも似たような傾向を感じさせます。
この点を踏まえると、ターゲット層、利用イメージが具体化されていきます。

ターゲット層、利用シーンから考えてコーヒーCMは作られている。

顧客の感情を理解しているか

缶コーヒーがもたらすベネフィットを探り出すことが顧客の感情を捉えるポイントになります。
缶コーヒーがもたらす癒やしとはどこにあるのでしょうか。
物事には、常にソリューション。
問題解決のメッセージが必要です。

商品やサービスは何を解決するのか。
キャッチコピーの世界では、このような問題解決がキーワードになります。
缶コーヒーは何のために飲むのか。
どんなことを解決してくれるのか。

もちろん10人いれば10通りの回答があると思います。
しかし1万人の回答では似た傾倒の割合が見えて来るはずです。
缶コーヒーを飲むことで何が起こるのでしょうか。

労働からの一次的な解放。
ベンチに腰掛け缶に口を付けている時、それは仕事をしている状況ではありませんよね。
気持ちも仕事からは離れていた記憶があります。

仕事を忘れ、どこかぼーっとしていられる。
そんな気分を与えてくれる時間を作ってくれるのが缶コーヒーなのではないでしょうか。

コーヒーCMでは何を打ちだしているか
働いている人の休憩と達成
ここで改めてコーヒーCMの内容を見てみましょう。
有名なものがBOSSの宇宙人ジョーンズシリーズです。

このコーヒーCMシリーズは常に働いている人が中心になっています。
宇宙人ジョーンズが地球人調査員となり、日本の働いている人の姿に扮し現場の苦労を体験するという至ってシンプルなストーリーです。
しかし、シンプルなストーリーの中にも愛される秘訣が隠されていました。

同じ立場、同じ目線が顧客の心を掴む

宇宙人ジョーンズシリーズでもっとも特出しているのは、そのキャラクターが現実の仕事として存在しているリアルなポジションである点です。

キャラクターが立ってしまうとと多くの場合、漫画のキャラクターのような普通では中々考えられないようなメンタルを持っていたり、才能を発揮し活躍する場面が多いものが見られます。

しかし、宇宙人ジョーンズは独特なキャラクターを打ち出しながらも感じることは、誰もが感じるような不平や小さな幸せを口にします。
とても親近感を覚える光景に視聴者は共感と安心を得るのです。

共感を得る要素として、同情という要素があります。
同情を感じることで自分と同じような感覚を持っているように感じ、距離感が縮まります。
その縮まる距離感をコーヒーCMでは多用されていると言っていいでしょう。

宇宙人ジョーンズが放つ最後の台詞は、疲れた時に感じる誰しもの言葉の代弁であり、その言葉を代弁されることで安心感へと繋がっています。

コーヒーCMは共感が関心を生む

生命に関わる賞品でない限り共感を狙う必要があります。
生命に関わらない賞品やサービスの場合、性能よりもその時に味わう気持ちや感情が軸になるからです。

感情や気持ちは同情や共感といった感覚に訴えるのが最良といえます。
何故なら感情は中々数値化出来ず、システム化もされていません。
一定の法則があるようで移ろいの激しいものです。

何故なら感情は、時代と周囲の関係性、環境に影響されるため法則としての限定的条件が設定出来ないからだと推測しています。
ですので、いかに利用者層の環境に同情し、その思いを汲み出せるかがコマーシャルのポイントとなってきます。

コマーシャルでは開発者の努力を汲んではいけない

商品を打ち出す側は非常な苦労の末、世に送り出しています。
その新製品の開発には膨大な努力と時間が掛かっていることでしょう。

開発秘話だけでドラマになるでしょうし、感動があるかもしれません。
しかし、それを受け取る側はその気持ちを理解は出来ません。
お金を払い良い商品サービスを受けたいという気持ちなだけです。

コマーシャルではつい製品の性能は改善された部分を打ちだしがちになります。
開発した側なのですからその気持ちを掬い上げてほしいと感じるのは当然です。

ですが利用者がその違いに関心を抱くかはかなりのヘビーユーザーではないかぎり関心を得るのは難しいでしょう。

その商品、サービスは人命に関わるか

特に缶コーヒーのような商品では顕著に表れます。
何故なら、缶コーヒーが無くても人は命の生命の危険にさらされないからです。

フィリップ・マズローの欲求5段階説では一番したにある生理的欲求に当たります。

生き物として生命を維持し、存続させたいという動物として本能の欲求です。
その一部細分化されているのが、ドルー・エリック・ホイットマンの(現代広告の心理技術101)で紹介されているLF-8とされている8つの欲求です。

・生き残り、人生をの楽しみ、長生きしたい
・食べ物、飲み物を味わいたい
・恐怖、痛み、危険を免れたい
・性的に交わりたい
・快適に暮らしたい
・他人に勝り、世の中に後れをとりたくない
・愛する人を気遣い、守りたい
・社会的に認められたい

人は本質的重要なポイントを捉えています。
もしこれがエアバックの搭載されていない時代に新しくエアバックが搭載されることになった車ならどうでしょう。

コマーシャルを打ち出すときは前面にエアバックの素晴らしさを打ちだしても効果を得られると思います。
何故なら、車の事故による死は誰の前にも訪れる恐怖だからです。
ですから缶コーヒーにはそのどれか一つを解決してくれるようなものではないとこが分かると思います。

缶コーヒーはそのような生命の危機に関する恐怖の解消に繋がるものではなく、それら最低限が満たされている上で求めている欲求なのです。
なので本能的に商品の優先順位が低いのです。

その場合、「味が良くなった」「増量した」というようなメリットを打ち出されても生命活動には直接は影響しません。
ですので副次的になってしまうのです。
もし、コーヒーの他にもっと命の関わるような不安を抱えていれば全く意識の外にはじかれしまうでしょう。

共感の言葉

どのような環境でどのような行動をしている時はどんな気持ちになっているかが鍵。
共感を得るには似た環境、境遇でいる時の気持ちをしっかりと汲み取りその状態の時に感じる人間らしい感覚にフォーカスすると見えて来ます。

共感は労いの言葉とは少し違います。同じ目線で同じ立場に立ったときの感情です。
その感情に対してのアプローチの一つとして労いの言葉があるだけです。
労いの言葉で注意しなければならないのは立場です。

どの立場からの言葉なのかによって、共感の領域が狭まってしまう可能性があります。
上司から言われて嬉しい時と、同僚や後輩から言われて嬉しい時。

もしくはその立場で言われても……と立場によっては共感出来ない瞬間が生まれてしまうので注意しなければなりません。

それでは宇宙人ジョーンズのコーヒーCMではどのような形になっているでしょうか。

宇宙人ジョーンズのシリーズであげます。
宇宙人ジョーンズ(工場編)
宇宙人ジョーンズが工場の新社員として入社する。
工場長 「今日から働くジョーンズさんです」
工場では荷物をフォークリフトで運び出す作業風景

ー 「この惑星の住人は働くという行為に取り憑かれているようだ」 ー

ベテラン社員がジョーンズに荷物の運び方の手本を見せる
「よし、やってみろ」
ジョーンズが楽々と荷物を持ち上げる
「やるねぇ」
1日の作業が終わりのベルがなる。
ベテラン社員がジョーンズを労い、コーヒーを手渡す。

ー しかも疲れることが嬉しいらしい ー

キーワードは「疲れることが嬉しい」がテーマだと予測します。
確かに思い返してみると幸せに近い充実感を感じる時は疲れていることが殆どでした。
会社に入社したての頃は、先輩に怒られてばかりでしました。
悔しくて、やり方も滅茶苦茶ながら精一杯やっていた記憶があります。
そんな日々があり、あるとき先輩が「なんだ、出来るじゃねーか」と。
その一言が凄く自信になった記憶があります。
体力的には疲労が溜まり、決して楽ではなかったですが、その瞬間に成長した自分に出逢えてようで誇らしかった。
けだるさの中に流れる充実感が代えがたく嬉しい。
皆さんにもそんな瞬間がどこかにはあったと思います。

「疲れることが嬉しい」はそんな入社したての頃の人の気持ちを代弁したキーワードです。

ヒーローズジャーニーで分析する成功法則

ストーリーをメッセージを伝えることで心に響く形にする。
ストーリー構成で用いられる形式としてヒーローズジャーニーがあります。

ヒーローズジャーニーとは、売れる物語の法則といっても過言ではありません。
本来は伝承として継承されてきた物語には共通の流れが存在し分析すると、12の要素で構成されているという内容です。

端的に言えば主人公の成長物語になります。この物語の流れは週刊少年ジャンプに登場する主人公ような物語です。
出逢いと旅立ち、困難と成長。そして窮地と勝利。熱い物語の全てが詰まっています。
これらの詳細は省きますが、分かり易い作品として「ロード・オブ・ザリング」「スター・ウォーズ エピソード4」などがわかりやすい構成の作品です。

宇宙人ジョーンズシリーズ(工場編)を分析すると
導入(冒険への誘い)、起(賢者との出逢い)、承(報酬)、結(宝をもっての帰還)
この4つの要素で構成されています。
導入は説明です。

工場の新入社員として入社するというのが説明部分です。
大事なのは導入とともに疑問を呈しています。それがモノローグの言葉

ー この惑星の住人は働くという行為に取り憑かれているようだ ー

「取り憑かれている」という言葉が状況を客観的な視点で捉えながらも卑下した表現になっています。
この部分が疑問であり、視聴者への投げかけです。
本能的に。
「その通りだ」「そんなことは」と感情が動いたのではないでしょうか。

起(賢者との出逢い)

ベテラン社員に仕事を教わるシーンがここに当たります。
方法を学び外面的な成長が訪れます。
ジョーンズは自身の力で解決してしまいますが作業の内容を理解把握する点では成長したと言えるでしょう。

承(報酬)

報酬は困難の先に手に入る成長の形です。
ベテラン社員がジョーンズを労い、コーヒーを手渡されモノローグが語られます。

ー しかも疲れることが嬉しいらしい ー

物質的に得たのはコーヒーですが、感情の報酬はモノローグの言葉です。
ジョーンズにとって知らない新しい感情が手に入ったことが芯の報酬になります。

結(宝をもっての帰還)

物語の結末です。この物語のメッセージ、意味とは。
という余韻の部分です。

実際のストーリーではエピローグとして扱われる部分も多く有ります。
宇宙人ジョーンズ(工場編)でもエピローグのような形になっていると言えるでしょう。
ここでは、最初のモノローグと最後のモノローグの対比です。

ー この惑星の住人は働くという行為に取り憑かれているようだ ー
ー しかも疲れることが嬉しいらしい ー

前段の投げかけのモノローグに対するアンサーのモノローグがあり、
ジョーンズは何を感じたのか。ここが結の部分です。

映像上では、文字や台詞は一切ありません。
コーヒーを一口飲むジョーンズがいるだけです。

ですので、これは視聴者が感じ取ってほしいという投げかけ的な終わりの形になっています。
しかし、最後ジョーンズの表情は明るく、上を向いています。
下からあおるようなカメラワークで構成されていました。

背景は夕焼けが反射する工場の壁と空。
ポジティブな印象を感じさせます。
推測ですが、ジョーンズは体験を通じ、嬉しいと感じる瞬間を感じた。
こんな生き方も悪くない。と言いたげなメッセージです。
締めくくりとして

このろくでもない、
すばらしき世界

がキャッチコピーになっています。
感情的な同情が「このろくでもない」に十分に含まれているように感じます。
そしてそれを肯定的に捉え包み込む愛が「すばらしき世界」なのでしょう。

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