この黒魔術は、世界を変える力が本当にあるのか考えたいと思います。
BlackmagicDesign URSA mini pro 12Kの登場
ブラックマジックデザインの新製品の登場です。
超画質の12Kの撮影が出来るカメラが現れました。
Canon EOS R5が8K撮影のカメラを発売した直後という感じですが
ブラックマジックデザインはその先をいく12Kのシネマカメラです。
REDも8Kの撮影可能なシネマカメラを発売していますが
12Kのシネマカメラはまだありません。
高解像度で押してきたREDへの挑戦状とも言えますし
第5世代カラーサイエンスの打ち出しはARRIへの挑戦状とも考えられます。
スーパー35センサーで12Kというちぐはぐな印象も感じますが
センサーサイズが全てではないのは確かです。
一番気になるのはラティチュードテストの結果ですが
ここはCinema5Dさんの記事の発表を待ちたいというのが
皆さんの気持ちなのではないでしょうか。
スペックを見る
URSA mini pro 12Kの仕様から抜粋しています。
有効センサーサイズ
27.03mm x 14.25mm(スーパー35)
撮影解像度
12,288 x 6480(12K DCI)
11,520 x 6480(12K 16:9)
12,288 x 5112(12K 2.4:1)
7680 x 6408(12Kアナモルフィック)
8192 x 4320(8K DCI)
7680 x 4320(8K 16:9)
8192 x 3408(8K 2.4:1)
5120 x 4272(8Kアナモルフィック)
6144 x 3240(6Kスーパー16)
4096 x 2160(4Kスーパー16)
4096 x 2160(4K DCI)
3840 x 2160(4K 16:9)
4096 x 1704(4K 2.4:1)
2560 x 2136(4Kアナモルフィック)高速フレームレート
12K 17:9フルセンサー – 60fpsまで
8K DCIフルセンサー – 110fpsまで
4K DCIフルセンサー – 110fpsまで
8K 2.4:1および4K 2.4:1 – 140fpsまで
6Kスーパー16 – 120fpsまで
4Kスーパー16 – 220fpsまで内蔵NDフィルター
4ポジションIR NDフィルターホイール(クリア、2-stop、4-stop、6-stop IR NDフィルター)
メディア
CFast 2.0カードスロット x2、SD UHS-IIカードスロット x2、
USB-C 3.1 Gen 2拡張ポート x1(外付けメディアへの収録時の給電)メディアのフォーマット
メディアをexFAT(Windows/Mac)またはHFS+(Mac)にフォーマット可能
コーデック
Blackmagic RAW 固定ビットレート5:1、
Blackmagic RAW 固定ビットレート8:1、
Blackmagic RAW 固定ビットレート12:1、
Blackmagic RAW 固定ビットレート18:1、
Blackmagic RAW 固定クオリティ Q0、
Blackmagic RAW 固定クオリティ Q1、
Blackmagic RAW 固定クオリティ Q3、
Blackmagic RAW 固定クオリティ Q524fpsに基づいたストレージレート
12K – 12,288 x 6480
Blackmagic RAW 5:1 – 578 MB/s
Blackmagic RAW 8:1 – 361 MB/s
Blackmagic RAW 12:1 – 241 MB/s
Blackmagic RAW 18:1 – 160 MB/s
Blackmagic RAW Q0 – 241〜578 MB/s 1
Blackmagic RAW Q1 – 144〜361 MB/s 2
Blackmagic RAW Q3 – 96〜241 MB/s 3
Blackmagic RAW Q5 – 72〜180 MB/s 4
8K – 8192 x 4320
Blackmagic RAW 5:1 – 258 MB/s
Blackmagic RAW 8:1 – 161 MB/s
Blackmagic RAW 12:1 – 107 MB/s
Blackmagic RAW 18:1 – 72 MB/s
Blackmagic RAW Q0 – 107〜258 MB/s 1
Blackmagic RAW Q1 – 64〜161 MB/s 2
Blackmagic RAW Q3 – 43〜107 MB/s 3
Blackmagic RAW Q5 – 32〜81 MB/s 4
6K – 6144 x 3240
Blackmagic RAW 5:1 – 145 MB/s
Blackmagic RAW 8:1 – 91 MB/s
Blackmagic RAW 12:1 – 61 MB/s
Blackmagic RAW 18:1 – 40 MB/s
Blackmagic RAW Q0 – 61〜145 MB/s 1
Blackmagic RAW Q1 – 36〜91 MB/s 2
Blackmagic RAW Q3 – 24〜61 MB/s 3
Blackmagic RAW Q5 – 18〜45 MB/s 4
4K – 4096 x 2160
Blackmagic RAW 5:1 – 65 MB/s
Blackmagic RAW 8:1 – 41 MB/s
Blackmagic RAW 12:1 – 27 MB/s
Blackmagic RAW 18:1 – 18 MB/s
Blackmagic RAW Q0 – 27〜65 MB/s 1
Blackmagic RAW Q1 – 16〜41 MB/s 2
Blackmagic RAW Q3 – 11〜27 MB/s 3
Blackmagic RAW Q5 – 8〜20 MB/s 4
というのがスペックです。
かなり振り切ってる感を感じますね。
URSA mini pro 12Kがどこを目指しているのか
仕様の辺りから探っていきたいと思います。
Netflixスタンダードを目指してる感が凄い
Netflixの認定を得られる称号は
シネマカメラとしての品格を証明していると言っても過言ではありません。
Netflixはカメラの指定があります。
そのカメラの基準は映画制作ラインが基準になっており
ネットフリックスの基準を満たしていないカメラでの制作物は
放送基準を満たしていないため採用されないという条件があります。
ネットフリックス基準でスタンダードな作品がARRIとREDです。
この二つのメーカーのシネマカメラならば大抵基準を通過できます。
それに続くように、SONY、PANASONIC、CANONのメーカーが続いている感じです。
映画制作のスタンダードはARRIとRED、PanavisionとほぼARRIとREDという常識感があり
その牙城を崩そうと、日本メーカー3社のシネマラインが第2グループとして続いている感じがあります。
※ Panavisionは中身がほぼREDと捉えて。
現在、ブラックマジックデザインのカメラは
その更に一つ下の位置付けの第3グループラインにあるという状況です。
第3グループラインは
SonyのFX9やFS7、PANASONICのEVA1、SH1、CanonのC500やC300mk2ラインです。
ブラックマジックデザインとしてもシネマカメラを売っている手前
この状況を変えたいというのが思惑ではないでしょうか。
12Kは日本のシネマカメララインを飛び越し
一気にARRIとREDと並ぶシネマスタンダードを築くカメラとして
位置づけたいという狙いを感じます。
ネットフリックスの基準
解像度要件:真の4K UHDセンサー (3840ピクセル幅以上のフォトサイト) がカメラに搭載されていること。
収録形式:RAW(ソニーRAW、REDCODE、Arrirawなど)
圧縮(XAVC、AVC-Intra、ProRes、その他I-Frame対応フォーマット)
16ビットリニアまたは10ビットログ形式以上
23.98fpsで240 Mbps以上のビットレート
収録変換関数
S-Log3, Log-C, V-Log, Log3G10等
収録カラースペース S-Gamut3.cine, RED Wide Gamut RGB, Alexa Wide Gamut等
ルックやカラー補正をオリジナルカメラファイルに焼き込まないこと。
ファイルは、すべてのメタデータ ( テープ名、タイムコード、フレームレート、ISO、WB等) を維持していること。
ブラックバランスの調整:カメラセンサーのブラックバランスの調整機能がある場合は、毎日、通常のカメラの動作温度下にて実施すること。 特定のブラックバランス調整に関する詳細は、カメラの操作マニュアルを参照のこと。
ネットフリックスのカメラと画像キャプチャより抜粋
このように、解像度、データレート
収録形式などシネマスタンダードラインを越えなければなりません。
Netflix的にはカメラは映画プロダクションカメラ以外は採用しない傾向を感じます。
というのが本音のように感じます。
この仕様を踏まえてURSA mini pro 12Kは
ネットフリックスでもAカメスタンダードに
位置づけたいという狙いがあるように感じます。
URSAはシネマスタンダードラインに
BMPCC6Kの発売でURSAの価値感が少し揺らいだように感じました。
BMPCC6Kが良いできだったのです。
URSAのスペックをほぼ網羅していながら低価格、小型で取り回しが容易という
点があり急にURSAの魅力が減ってしまった印象を感じていました。
ほぼ変わらないスペックで小型化し低価格で
シネマカメラを使えるBMPCCが次ぎのスタンダードになるかなと思っていました。
※ ブラックマジックデザインはカメラのラインを次々にコンパクトにしてきた流れがあるので
それに今までのURSAはシネマカメラのBカメラインや
小規模の映画ライン、ドキュメンタリー、ドラマラインのAカメスタンダードを
目指しているように感じがあってので
URSAシリーズはクローズし、BMPCCラインの強化に以降するかと思ったのですが
ブラックマジックデザインとしては、その上のラインで戦っていくようです。
それが今回の12Kのアプローチに集約されているように感じました。
プレミアでは都合が悪い仕様に
仕様を確認するとProResの撮影は出来ません。
全てBRAWのみの撮影です。
しかも最低解像度が4Kです。
選択可能な解像度が12K、8K、6K、4Kとなっていました。
プレミアでBRAWを使うにはまだ、プラグインを介す必要があり、
BRAWの性能はダビンチで一番性能を発揮する仕組みになっています。
プレミアベースでのプロジェクトを組んでいる場合には
旧来のカラーをダビンチ、プレミアで繋ぐというフローを行う必要が出てきそうです。
12Kスーパー35センサーの不安
今回公開されている情報の文言を確認するとやや不穏な感じがしています。
ブラマジの黒魔術がここに降臨していると言った感じです。
昔は、出る出る詐欺と言われたブラマジ
ダイナミックレンジ偽装と叩かれたブラマジ
一昔前は白雪姫の魔女のようなあくどい印象でしたが
URSA mini ProやBMPCC4Kの登場で
ここ数年は遊戯王のブラックマジシャンレベルの優等生ぶりを
発揮していた印象だったのですが……
またやらかすのか!?
そんな不安を感じる新センサー
というのも、気になったのは下記のような記述
センサー内のスケーリングによって、110fpsまでの8Kおよび4K RAWの撮影も可能です。
クロッピングしたり、視野を変更する必要はありません。
というのもRAWレクの場合、センサー機能をそのまま切り出すため
解像度を下げことは基本的にセンサーの使用範囲を制限する構造のため
画角はクロップアップされます。
そして8K撮影のカメラがほぼ35mmフルサイズのセンサーなのは
センサーサイズが解像度に比例関係に近いからと言えるのです。
※ センサー面積の限界で高解像度出力できないという問題なのかなと。
そもそもスーパー35mmセンサーで12Kが可能なのか?
RAWではなく外部処理して12Kにしているのではないか。
さらに解像度でクロップアップしないというのが
非常に不安にさせる点として浮き上がってきます。
新センサーで感じる不安は、センサーの外でアプコンして
正規の解像度ではなく偽装のマジック解像度なのではないか?
という感覚に囚われてしまうのです。
新センサーのピクセル構造が奇跡を生むか
ここで気になるのはもう一つの文言です。
垢、緑、青のピクセル数が同じ
という部分です。現状の殆どのセンサーは人間の目に合わせて
RGBのフォトダイオードのカラーフィルターの比率を緑2:赤1:青:1という仕様になっています。
このピクセル数が同じという点を考えると
もしかしたらフォトダイオードのフィルターは緑2:赤2:青:2または
緑4:赤4:青:4となっているのかもしれません。
となるとフォトダイオードの大きさが1/4程度小さくなっているのか
プリズム式など方式を変えているのかも知れません。
GPUのラインナップのようにフォトダイオードを感光数を制御することで
解像度コントロールをしていると推測しています。
12Kならばフルで使用し、4Kならばフォトダイオードの感光数を
1/3に制御し解像度調整を行っているのかもしれません。
ダイナミックレンジがURSAminiPro G2の15ストップから14ストップに落ちている点も
センサー密度が高まったことによる影響と考えていいでしょう。
RAWのみに絞ることで、画像処理エンジン部分のチップを削り
感光センサーに振っているのかもしれません。
ネットフリックスにターゲットを絞っていると推測する理由
クロップアップしないといのが一つのポイントです。
ネットフリックスの仕様要件は基本的にセンサーの
フル解像度でのレクを求めています。
RAWレクで解像度を落とすとレンズの使用範囲も狭くなり
カメラとしては適切ではなくなってしまうからです。
RAW以外でのProRes撮影やXAVC、XF-AVCなどの
クロップアップされない仕様ならば問題ありませんが
NetflixではRAW推奨のようなので、解像度を変えてもRAWが使えるのは
ネットフリックスのスタンダードカメラを狙っていると
考えて間違いないと言えます。
この構造がNetflix側でも通れば、使用範囲が広がり他のカメラにはない
解像度コントロールを行える魅力的なカメラなる可能性があります。
次ぎのスタンダードになれるかは未知数
cinema5Dさんのラチュードテストの結果と新しいカラーサイエンスの結果見ながら
12KがどこまでARRIやREDに追いつくのか楽しみにしたいと思います。
この仕組みは面白いと思うのでもしかしたらセンサーの
新しい業界スタンダードを作って行く未来も感じました。
魔法か真実か、ブラックマジックデザインは
「期待」という魔法を掛けるのが本当に上手いなと思いました。